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残念な算数教室

数年前、「親子で学ぶおもしろ算数教室」と題するウェブページを見て、その内容に疑問を感じたので、メールで意見を送ったことがあります(返答は無かった)。
最近、ひょんなきっかけで数年前のその出来事を思い出し、当該ページを見ようと探したが、すでに削除されていました。しかし、ウェブ魚拓が取られており、それを見れば、おおよその内容は現在でも確認できます。
http://megalodon.jp/2008-0930-1137-51/www.jtu-net.or.jp/education/sansu/series/08.html
上記の魚拓を見ていたら、改めて腹が立ってきたので、一体この「算数教室」の何が良くないかをまとめて、ここに書くとします。

その「算数教室」の骨子は、以下の通り。
F15戦闘機の最大速度(マッハ2.5)及びマッハ1 = 340m/秒 という情報を示して、以下の3つを出題する。
  • 問1
    「F15の最大速度を秒速 [m/秒] および分速 [km/分] に変換すると、いくらになるか」
    (解答は、860m/秒、51km/分)

  • 問2
    その結果をもとに
    「F15が沖縄→東京間(1600km)を飛行するのに、何分を要するか」
    (解答は、31分)

  • 問3
    さらに、F15が120分間、連続飛行可能であるという情報を示して、
    「F15が最大速度で120分間飛行すると、何km進むことができるか」
    (解答は、6120km)

上記のような出題文とあわせて、沖縄の米軍基地にまつわる様々な話が挿入されている。こんな具合だ。

(魚拓から引用)

フェンスの向(む)こうのデージ(とても)広いカデナ米軍基地の滑走路(かっそうろ)には、世界最強(せかいさいきょう)とされている「F15イーグル」が58機(き)いるんだ。そんな戦闘機が、毎日、沖縄の空(そら)を自由(じゆう)に飛(と)んでいるんだよ。みんなの中には「かっこいい」と思う子もいるかもしれないけど、日常(にちじょう)に飛んでいるわけだから、ちょっと怖(こわ)い気もするよね。

 カデナ米軍基地の新聞(しんぶん)でも、東(ひがし)はアラスカから西(にし)はアフリカまでと発表(はっぴょう)しているんだ。本当にこの戦闘機(せんとうき)は、沖縄や日本を守(まも)るために飛んでいるのかな?

「カデナ米軍基地」と「1あたり量」の
 授業を受けた嘉手納の子どもたちの感想

小さな島“沖縄”の小さな町“嘉手納町”に、こんな飛行機が置(お)いてあるなんて。この基地からミサイルが発射(はっしゃ)されたら、狙(ねら)われるのはこの島で、私たちは逃(に)げたくても逃げられないだろう。こんな小さな島に大きな基地があるので、とても怖い。

「1あたり量」がわかってくると、世(よ)の中のいろいろなことが見えてくるね。社会(しゃかい)や総合学習(そうごうがくしゅう)へ発展することができるんだよ。


(引用ここまで)

これらを読むと、
「算数の授業を、無味乾燥に終わらせずに、社会科や総合学習へとつなげよう」
という作り手の思想が感じられます。私は、それは全く正しいと思う。こういう、血の通った面白い授業をしたい、という意志は大いに尊重したい。
ただし、それには、次の2つの条件を満たすことが絶対に必要です。
  • 条件1
    これは「算数教室」なのだから、あくまでも、算数の学習が主、総合学習が従であること。もし、算数の学習教材として質が悪いならば、たとえどんなに総合学習部分に力を入れようが、それはダメである。

  • 条件2
    総合学習部分についていえば、実際の授業において、生徒児童の自主性を充分に尊重する配慮がなされること。沖縄の米軍基地問題を例に取れば、教師は必ずしも中立である必要は無く、何らかの意見を持っていても構わないと思う。ただし、授業において、教師が、自分と同じ意見の生徒のみを褒めることで、違う意見の生徒が発言しにくくなる…という事態に陥ってはならない。

問題の「親子で学ぶおもしろ算数教室」に話を戻すと、これが条件2を満たしているかについては、私は怪しいと思っているが、明確にそう言い切る根拠がないので、ここでは言及しない。ただ、条件1については、残念ながら“失格”であると言わざるを得ません。その根拠を以下に述べます。

今回のF15戦闘機を題材にした出題では、次の2点が暗黙の前提となっている。
  1. マッハ1は、340m/秒に該当する
  2. F15は、最大速度で120分間飛び続けることができる

しかし、いずれも間違いである。
マッハ1とはすなわち音速のことだが、これが340m/秒であるのは、「気温 15℃、1気圧において」という条件がつく。実際に飛行機が飛ぶ高度では、気温も気圧も低くなるため、音速が300m/秒になったりもする。誤差の範囲で片付けることのできない違いだ。
また、F15に限らず、飛行機は最大速度で飛ぶと、膨大な燃料を消費し、燃費がたちまち悪化する。だから通常は「巡航速度」と呼ばれる、ある程度抑えた速度で飛んでおり、全速力で飛ぶのは必要に迫られた時、ごく短時間だけ、というのが基本だ。F15が120分も飛び続けられるのは、巡航速度で飛ぶ場合なのである。

従って、厳密に考えるなら、この「算数教室」の出題は、3つとも解答不能なのである。もし、これを算数の問題として成立させたいなら、
「マッハ1は、厳密にはいろんな条件で変化するんだけど、ここでは計算を簡単にするために、340m/秒としてあつかうよ。また、F15戦闘機が120分飛び続けられるのは、本当は最大速度では無理なんだけど、ここではやっぱり、簡単にするために、最大速度で120分飛べるとしてあつかうよ」
という前提条件を明記することが必要だ。

「そりゃそうかもしれないが、何も、そんなに目くじら立てなくても…」
と感じる人もいるかもしれない。ではここで、ちょっとひとつ、私も算数の問題を作ってみたい。

「ここに、時速1.6キロメートルで飛ぶ蚊が1匹います。この蚊が、沖縄→東京間(1600km)を飛ぶのに、何時間必要でしょうか?」

この問題、私なら解答できない。そりゃ単純に計算すれば1000時間だけど、そもそも蚊にそんなスタミナがあるのか?仮に飛べたとしても、途中で休み休みではないのか?などの疑問が湧いてくるからだ。算数の問題ではなく、生物学の問題になってしまっているのである。この、私が作った問題は、算数の問題としては悪問であると言えます。

「親子で学ぶおもしろ算数教室」も、同じだと思うのです。小学生でも、マッハ1が単純に340m/秒では無いことを知っている科学好きな子もいれば、F15が最大速度を出すためには燃料を膨大に燃やす必要があり、とても120分など飛んでいられないことを知っている飛行機好きな子もいると思う。その子たちは、「算数教室」を前にして、「踏み絵」を迫られる。すなわち、
「真実を貫くなら、この問題には解答できない。しかし、それでは0点だ…。真実を曲げて、この教師の意に沿うような解答(860m/秒、51km/分、31分、6120km)をすれば点はもらえるだろう。どうすべきか…」

これが悪問でなくて何なのでしょうか。
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