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その話は伝わっているか

ある講義の現場で、聴覚障害を持つ受講生に対する情報保障をおこなった。
そこで、講師が次のように聞いてきた。
「私の講義、ちゃんと彼に伝わってますかね?」
情報保障チームのうち、手話のできるメンバーが、当の受講生に対して、講師の疑問を手話で伝えると、彼は
「まあまあね」
といった風情で頷いた。それを見て講師も安心したようだった。

・・・と、ここで話が終わればハッピーエンドだが、そうはいかない。

「講義等の音声情報を、PC要約筆記者が聴いて入力して文字化し、それを、聴覚障害者が読む」
この一連の流れが、ちゃんとうまく伝わっているか?
それを、当の聴覚障害者に質問しても意味がないのである。
なぜなら、彼はにとってはPC要約筆記者が出した文字だけが情報源であり、講義の音声を聞くことができないため、「ちゃんとうまく伝わっているか」を検証しようがないからだ。

話を戻すと、私は正直に言って、その講義での字幕の品質には自信が無い。
講師が非常に早口だったため、話の内容を全て文字化しようとすると追いつかない。そこでPC要約筆記者としては、話された内容のうち、枝葉末節をばっさり切り落とし、重要な幹の部分だけを確実に文字化しなければならないのだが、その選択がうまくいかず、枝葉を追いかけて幹を落とす、という事態が頻発してしまった。

にもかかわらず、なぜ彼は「まあまあ伝わっている」と意思表示したか?恐らく、その講義では事前に大量の資料が配られており、講義内容も基本的に資料に沿ったものだったので、それを読めば大体OKということで、すなわち、PC要約筆記の字幕はあまり当てにしていなかった・・・という可能性が高いと思う。

字幕をあてにしてもらえるように、もっと技術を高めましょう、というありきたりな結論になってしまった。
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